「何のために」が肝心です。

「ゴール設定からスタート」と、あまりにも当たり前のタイトル、拍子抜けの方がいるかもしれません。しかし多くの現場に立ち会った経験で云うと、この肝心のゴール設定が明瞭化されていない、共有されていない、もしくはゴールのイメージを絞り込めていない、そういうケースが案外、多いものです。
現場では「やるべきプロジェクト」という、ふわったしたイメージで了解されているケースが多いものです。企画の時点でも、このゴールが明確に共有されていないケースも多いように思います。

動画の企画というと、アイディア一発、というイメージが根強くあります。プロのプランナー(ディレクター)も戦略的なゴール設定とは無頓着に、構成をつくり始めたりします。確かに業界には、腕はすこぶる良いものの、マーケティング的アプローチには疎い職人肌のスタッフが多いことは否定できません。彼らは映像に特化した職人なのですから、発注者側のほうが、明確にゴール設定を提示しなくてはなりません。

「云わずもがな」が躓きにつながる。

発注者にとってゴールは、「云わずもがな」ということなのでしょう。わざわざ声をだして云うまでもない。「売りたい」、「ブランド力を高めたい」、「いちいち云わなくてもわかるじゃん」ということなのかもしれません。しかし一見、シンプルに見えるゴールも、良く突き詰めて考えると、意外に盲点があるものです。

なぜ筆者がゴール設定にこだわるかは、多くのケースでボタンの掛け違いによる失敗をみてきたからです。かっこ良いビデオをつくりたい、見栄えのいいビデオをつくりたい、それは誰でも考えることですが、闇雲に企画を進めてしまうと、肝心のゴールを見失うことになりかねません。それは効果の薄いビデオになることを意味します。

たとえば採用希望者に向けてのビデオ制作であれば、最終ゴールは、「採用希望者の獲得」というのが一般的です。そしてその最終ゴールを実現するためには、視聴者の心に、「この会社の面接を受けてみたい!」という動機づけを与えなくてはなりません。これが、サブゴールです。しかしこうした最終ゴール、サブゴールのイメージをしっかりもっていないと、出来上がったビデオは、会社説明という感じの、ありきたりのビデオになってしまい、強い動機づけにつながらないことになってしまいます。

いかにモチベーションさせるか、それが重要であることが了解されているのであれば、おのずとビデオの構成も変わってきます。社長自らが、採用希望者に対して企業理念について熱く語りかけたり、公平性やインセンティブまで話が及びかもしれません。そうしたビデオ作成に踏み切れるかは、


”しっかりとゴール意識を強くすることと、
そのゴール実現のために、視聴者の心に何を芽生えさせるか”


を、企画以前に明確にしておく必要があるのです。


そもそもゴール自体を疑ってみる。

そもそも何のためのゴールなのかをいま一度突き詰めて考えてみるのも質の高い動画をつくるうえで必要ではないかと筆者は考えます。筆者自身も、自身のビジネスにおいて、わかっていると振り返ることがなかったプロジェクトに対して、再度ゴールを意識し確認してみると、意外な発見があったりするものです。またそれに合わせて戦略を組み直したりということも多々あります。

以前アルバイト・パートの研修中に見せるビデオの制作を御願いされたことがありました。発注元の会社理念は、「質の高い接客」「徹底した顧客至上主義」というものでした。この会社では、店頭におけるアルバイトやパートの比率が極めて高いことから、理念を実践するために、アルバイトやパートへの教育を徹底していたのです。
そのため担当スタッフからの要望は、研修内容を納めた教育用ビデオを作成してほしいというものした。しかし会議中、担当部長から驚きの発言がありました。「二日間にわたる長い研修時間で、訓練を受けた内容をさらに見せられるのは、そもそも受講者にとっては苦痛ではないだろうか? そうであれば、この仕事が如何にやりがいのある仕事なのか、そうした内容を、研修スタート時に見せたほうが得策ではないだろうか?」という確信を衝く意見でした。最初はきょとんとしていた担当スタッフも、彼の主張に同意するようになり、結局ビデオの内容は、現役アルバイト・パートの語る、やりがいをフューチャーしたインタビュービデオとなりました。最終的に軽快な音楽をリズミカルな編集のもと、プロモーションビデオのような仕上がりの動画となったのです。

「研修内容を再確認する」という当初のゴールから、「研修者に対するモチベーション向上」にゴール自体が転換することにより、現場でしっかりと効果を示す動画が実現することになったわけです。この例を見ても、ゴールを意識し、突き詰めることが如何に重要かがわかってもらえるかと思います。

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出版社やゲーム会社など事業会社において、営業の最前線から上流の戦略策定まで一貫したマーケティング・経営の実践を学んだあと、2002年よりウェブへ転向。SEOやリスティング広告のコンサルティングを経て、現在は、ブランディング、コミュニケーションについてのプランニング・コンサルティングを行う。また近年は、映像制作やエディトリアル・コンテンツ制作にも力を入れています。著書:『ホームページ担当者が知らないと困るWebサイトリニューアルの常識』(ソシム刊)

1コメント

  1. […] 動画の企画というと、アイディア一発、というイメージが根強くあります。 そうしたビデオ作成に踏み切れるかは、そもそも何のためのゴールなのかをいま一度突き詰めて考えてみるのも質の高い動画をつくるうえで必要ではないかと筆者は考えます。 最終的に軽快な音楽をリズミカルな編集のもと、プロモーションビデオのような仕上がりの動画となったのです。 「研修内容を再確認する」という当初のゴールから、「研修者に対するモチベーション向上」にゴール自体が転換することにより、現場でしっかりと効果を示す動画が実現することになったわけです。 [紹介元] まずはビジネスゴールの設定からスタートしよう! | 動画マーケティングジ… […]

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