旧来のバズ動画の限界

バイラルマーケティングの動画というと、以前はソーシャルメディアで拡散させるために、とかく面白さや奇を衒った表現ばかりが求められる風潮にありました。YouTubeが登場した2005、6年頃を思い返してみると、まず思い浮かぶのが、ブレンドテック社の、“Will it Blend?”シリーズ。ミキサー(ブレンダー)に、ゴルフボールやiPhoneなど思いもよらぬものを入れて粉砕してみようという動画でソーシャル上で大変な人気となりました。またコーラにメントスを入れるとコーラが爆発するように吹き出るという衝撃的な映像を紹介した“メントス&ダイエットコーラ”シリーズなども大きな話題となりました。


【ブレンドテック社の“Will it Blend?”シリーズ】
70年代初期の番組っぽいつくりが楽しく、
大ヒットとなったシリーズ。
ブレンドテック社の知名度を
一挙に高めることになった。
公開から10年を経るがいまだに動画を更新中。

https://www.youtube.com/user/Blendtec

Screen Shot 0029-04-06 at 12.14.46 AM

確かにいずれの動画も面白く夢中になりましたが、マーケッターにとっては、こうしたバズマーケティングに投資するには、かなりの勇気が求められます。

マーケッターを躊躇させる理由のひとつは、どんなに面白い動画を制作できたとしても、バズへと拡散できる保証はどこにもないということです。クオリティが高かったとしても、必ずしもバズにつながえるかの保証はありません。つまり、かなり“投機性の高いアプローチ”であるということになります。

さらに、幸運にもバズで話題となり有名な動画になったとしても、それがそのままダイレクトに収益につながるかの保障がないことも挙げられます。フォーカスされるのは面白さや奇抜さばかり、商品特性そのものに目が行かなければ、購入動機へとつながるわけではありません。

そうした奇抜さばかりで実際のマーケティング効果に疑問のあったバズ動画ですが、最近のバズマーケティングの動画はどのように発展を遂げているのでしょうか。

売上げへと直結する新しいバズ動画

今回紹介する動画は、面白さ重視の従来のバズマーケティングの動画とは一線を画すものです。題材が下ネタなので、いささかご紹介を躊躇しましたが、新しいカタチのバズ動画として示唆に富むものなので、ご紹介したいと考えます。

主役は、可愛いユニコーン。彼は、七色のアイスクリームをお尻から吐き出します。しかし間違った角度では、うまく排出することができません。スムーズに排出するためには、太古の時代から人間が排泄した時の姿勢になる必要があります。そこで正しい姿勢に導いてくる台座が足元に登場します。これが本ビデオの主役、“squatty potty”という商品です。Squattyは、スクワットと同じしゃがむの意。Pottyというのは、日本語で言う「おまる」みたいなことでしょうか。この商品を足元に置いたユニコーンは、スムーズに排泄ができるようになります。

表現の難しいこの商品を、かわいいユニコーンを使い見事に表現したこの動画は公開後、口コミで大きく広まり、FacebookやYouTubeで5000万ビュー以上の閲覧を記録しました。またそのうちの70%は3分に及ぶこのビデオを最後まで視聴したとのことです。

しかも動画の面白さが口コミで伝搬しただけでなく、実際に売上げ自体を大きく底上げさせることにも成功しました。オンラインの売り上げは600%を超え、小売における売り上げも400%を超えたということです。

大きな成果を得たのは、従来の、面白さ重視のバズ動画と違い、あくまでも商品特性にフォーカスしたつくりとなっていることに起因しているのではと考えます。

あくまでもゴールは、セールスに導くこと。

制作したのは、数々のバズ動画で多くの成功を収めてきたHarmon Brothers社です。
このプロダクションの制作した動画はどれもバズを狙ったものですが、奇を衒うばかりでなく、論理性に根ざし、あくまでも商品特性を謳ったものばかりです。
創業者でクリエイティブディレクターでもあるジェフリー・ハーマンの声は示唆に富むものです。

「私たちは、何よりも最初にセールスマンでなくてはいけません。 アーティストであることは二番目です。 ただそれらの差は極めて僅差でもあります。 ときにクレイジーなアイディアが浮かびあがります。 しかし私たちは常に自答しなくてはなりません。 本当にそれは消費者を購入へと導けるのか?と。 もし答えがNoであれば、私たちはそのアイディアを採用することはありません。 それがどんなにクールで面白かったとしてもです。 私たちの一番の目的は、あくまでもセールスを高めることであり、 それと同時に強いブランドを供給することにあるのです。」

話題ばかりが先行し売上げにつながらいバズ動画に長らく不信感を募らせていた筆者にとっても、ジェフリーのこうした発言はとても勇気づけられるものです。バズ動画につながる突出したアイディアをひねり出すとうことは非常に難しいものですが、商品特性に特化する話題づくりとして考えるのであれば話は変わってきます。
たまに筆者のもとに、アイディア一発、何でもよいから面白いアイディアをくださいというお仕事がきます。しかし論理性を伴わないアイディア出しには閉口しますし、そもそも私には、悲しいほどに、そうした才に恵まれていません。
しかし商品特性をいかに面白く見せるかというアプローチであれば、論理性を起動させることができます。自分でもバズ動画を、プランニングしたりディレクションしてみたいという気持ちにさせられます。

ジェフリーの言葉のなかで重要なことは、いかにバズを生むのではなく、いかにセールスにつなげるかがゴールであるということを再認することにあります。購入に結ぶつくことのない数多の消費者に対して話題を振りまいてもセールスに結びつかなくては意味がありません。売上げ向上という目的を達成させるには、本当に欲しいと思う人に情報を伝えなくてはなりません。ジェフリーたちの試みは、商品やサービスの特徴にフォーカスしたコンテンツを提供することにより、商品やサービスへの強い興味を喚起させます。動画を見て刺さったユーザーは、その時点で商品やサービスに強い興味を感じる人に変わっています。つまり遍く多くの人に閲覧してもらうだけでなく商品特性をテーマに描くことにより、明確なターゲティングへと帰結させるという訳です。ジェフリーたちがつくる多くのビデオが、セールスの飛躍的向上という成功を手に入れることができるのは、ここに要因があるのでしょう。

前段のビデオは3分ですが、日本人から見ると、語り口がややしつこく長く感じます。ジェフリーは、Facebook向けに、より短くシャアしやすい別のバージョンも制作しました。こちらも公開後、10万シェアを獲得、成功に至ったとのことです。

 

 
 まとめ:

 この動画から導かれたバズ動画の成功の要因を簡単にまとめてみました。
 ・あくまでも最終ゴールはセールスであるということ。 
 ・面白いというアイディアに引きづられて最終ゴールであるセールスを忘れないこと。 
 ・セールスへと直結するため、商品やサービスの特性をテーマに描くこと。 
 ・特徴を描くときは、なぜ消費者にお勧めできるのかを、論理的に説得すること。 
 ・発注側も、上記の条件が揃っていれば、制作側から提示された思い切ったアイディアを
  積極的に採用しようという心構えでいること。


参照:
How to Convert a Viral Video Viewer:The Harmon Brothers Model
http://tubularinsights.com/viral-video-harmon-brothers/#ixzz4d4QF6ydN

Squatty Potty’s CEO Ignored Everyone, Made an Insane Video and Boosted Sales 600%
http://www.adweek.com/brand-marketing/squatty-pottys-ceo-ignored-everyone-made-insane-video-and-boosted-sales-600-168526/

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